『私はダニエルブレイク』あらすじと概要
2017年に日本で公開された。第69回カンヌ国際映画祭でパルムドールを獲得した作品です。
老人ダニエル(デイヴ・ジョーンズ)は病気のため仕事ができなくなり、行政に頼るもオンライン申請一つこなせないため給付の手続きもできず疲弊した毎日を送っていた。
役所の係と面談しても職務は可能であると判断され、困り果てている時に、ロンドンから引っ越してきたシングルマザーのケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)家族と出会い、ダニエルの人生は変わっていく。ケイティもまたダニエルによって救われて行き、お互いが家族のように信頼し合う生活となっていく。
ケイティの子供達もダニエルを慕い、二人の適切な関係によってそれまでの苦しかった日々に活路を見出すも、結末としてダニエルは最後、あっけなく死んでしまう。
監督/ケン・ローチ 脚本/ポール・ラヴァーティ 撮影/ロビー・ライアン
音楽/ジョージ・フェントン
この映画が訴えるテーマと感想。
この映画に出てくる人々の中に、お金持ちはいません。そして主演のダニエルといい、隣人の青年といい、社会の底辺に近い世界で息をし、なんとか均衡を保ちながら生活している人物ばかりです。
21世紀に生きるイギリス人にこんな貧困層がいるのか!と私は驚きました。
冒頭からちょこちょこ出てくるシーンなのですが、ダニエルはパソコンが使えません。クリックするのも画面入力するのも一苦労です。日本にもまだそんな老人はいるのでしょうが、都心部ではみなスマホを闊達に操作している老人ばかりです。
ケンローチ監督は、社会の貧困に自ら寄り添いながらこの作品を撮ったのでしょう。泣くつもりなどなかった私は急に涙が溢れて止まりませんでした。
誰が悪いわけではない、社会が悪いのだ。今の日本に照らし合わせてみた私の心からの感想です。
演出と脚本
オススメ度 ★★★★★
ケン・ローチ監督独特のドキュメンタリータッチの撮影で、登場人物の一人一人が見事に輝いています。俯瞰して見てしまう役所の係まで魅力的に見えます。★5つの満点です。
淡々とストーリーは進んでいくのですが、ケイティが配給所で貰うパスタの缶を開けて自らの手でむさぼるように食べるシーンは圧巻でした。もしかしたら撮影直前まで絶食を強いていたのかもしれない、などと想像してしまいます。見事な演出力ですね。
私はケン・ローチ監督の大ファンなので贔屓目に見てもそれ以上に素晴らしく感じました。
タイトルの『私はダニエル・ブレイク』私は犬ではない!ダニエル・ブレイクだ!と、大きな声を掲げて私は一人の人間だ!と社会に訴えている様が感じられます。
イギリスの社会保障制度に対して一石を投じる大きな言葉だと思える、この一言に尽きる脚本の素晴らしさですね。
我が国、日本の社会保障制度も見習うべき点がいくつもあります。
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キャストについて
主演のダニエル役を演じたデイヴ・ジョーンズはコメディアンであるが、この映画の主役としては実に適役だと思います。
ケン・ローチ監督は自分の映画を撮るにあたり、キャストをオーディションで決めることの多い監督です。このことを鑑みてもスター俳優を起用する訳ではなく、その他の才能ある人々をどんどん自作に起用している。
その上で、カンヌ映画祭のパルムドールを二度も獲得するなど、素晴らしい功績を残しています。日本で言えば故、今村昌平監督のような、やはりヒューマンドラマを作るのがお得意なようですが素晴らしいと思います。今後も期待したい映画監督さんです。どうか長生きをして下さい。
他のキャスティングについてもミスしているとは思えません。
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『私はダニエルブレイク』鑑賞まとめ
- 第69回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品である。
- イギリスの貧困層に監督自ら寄り添って、ダニエルという老人を中心にその周辺で生きる人々の苦労や社会的なメッセージを作品を通して投げかけている。
- この映画に富裕層のキャストは出てこない。
- 撮影はドキュメンタリータッチで観客の心を掴み自己投影をさせてしまう。
- 何もしてくれない役所に対して、役所の壁に「私は犬ではない!ダニエル・ブレイクだ!」とペンキで大きく書いて主張するシーンが圧巻であり、私はそのシーンで涙してしまいました。
- この作品は、紛れもなく現在の世界の貧困層が精一杯生きながら、各国に大きな主張をもたらしている社会的大作と言えます。
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